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  • 『当て馬の恋』甘粕杏奈(著)_すべて失ってから本物の恋ができるのかもしれない

    はじめに(一切のネタバレを嫌う方は注意です) 

    とにかくまずは読んで欲しい。私はこの物語の六章目からすでに感想が書きたくてしかたなかった。この物語には喜怒哀楽が全てつまっていて、心が動かされる話です。もうあらすじの時点で面白い。

     

    『当て馬の恋』甘粕杏奈(著)

     

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     「当て馬師」という発想。それ、どうやって思いつくんだよとつぶやかずにはいられない。私はBL小説家志望の端くれなので、書き手として、そして純粋な読み手としての感想が混同してます。それが煩わしいと思う方、またネタバレが嫌な方はまず作品を読んでくれ、と思います。

     

    こういう感想を書くのがはじめてなので、ちゃんと伝えられるか不安ですが、全力を尽くしたいと思います。言い訳も済んだ所で、準備ができた人だけ以下を読んで欲しい。

     

     文章のそこかしこに漂うただならぬ雰囲気

    この物語のあらすじを読んだだけでも、そう簡単には幸せになれないんじゃないかと思わせる。それは本文にも滲み出てます。

     

    憂いを帯びる主人公、久世が彼の想い人である悠里と念願叶って楽しい時を過ごす、そんな時でさえ一筋縄ではいかなそうな余白が垣間見えるからずっとハラハラしっぱなし。二人がラブラブなのにハラハラする、だから続きが気になる。六章目を過ぎたあたりから一瞬で読んでしまいました。それくらい引き込まれた。

     

    内容のキーパーソンと話の流れを作るキーパーソンがいる

     正直、私は先の展開が全く読めなかった。“この黒竹が怪しい!いや、やっぱこの大学生も怪しいし……ええ、もう全然わからん。どうなっちゃうの?”って感じで話に引き込まれていった。

     

    最初に読み手を引き込んでくれたのは黒竹だった。私は彼の最初の登場がすごい引っかかった。なんだか唐突に感じたからだ。でもその違和感って必要で、なんだこいつ?って思わせるのが重要だったからだ。

     

    じゃあなんで黒竹は突出した存在だったか、それは話をスムーズに展開させるのに彼が必要だったから。黒竹のおかげで久世の珍しい職業について、生い立ち、容姿そして好きな人の話を展開させてる効果があると思いました。

     

    なにこの技術……と高い壁を感じながら読みました。この黒竹の異質感は下手をするとすごい浮いてくどい役になりそうだが、それが全然そうじゃない。なぜなら彼はお茶目だからだ。

     

    三章で久世の分かりやすいおだてにのる黒竹、“めっちゃ可愛いやん”ってニヤニヤしながら読みました。こういう可愛さが異質感を和らげているんじゃないかと思いました。とにかくまず黒竹効果がすごいなーと思いながら読み進めました。

     

    黒竹効果はこれだけじゃない。読み進めていくうちに物語の疑問点を浮き彫りにしてくれている。だから読者が置いてきぼりにならならい。*1 黒竹効果を語るだけでこんだけの長さになってしまったが、まだまだ書きたいことがある。でもまぁ読んだ人なら分かるだろう、彼はきっと憎めないキャラ。というか私は黒竹が大好きだ。*2

     

    物語に色をつける

    は?と思ったあなた。あなたは間違ってない。ただ他に言いようがなかったのでこう言ったが、黒竹効果の他に物語を脚色してくれてるアイテムがいくつかあると思ったので、メモったやつだけ書きます。

     

    その一、ハチ

    なんとこのハチが大学生の青年の生い立ちの切り出しになる。しかもさ、話の流れを止めず、悠里の格好良さもプラスさせるから、このハチがすごい。

     

    話が逸れますが、悠里が「島の男でサーフィンをやらない奴は、変態だ」って言うんだけど、このセリフめっちゃ好きです。自分でもわからないけど“格好良い!”と思った。(今もこれ書きながらニヤニヤしちゃうほどね)

     

    その二、雨

    雨が降り出したら物語も急速に流れ出す。例のただならぬ雰囲気も増して久世の心情とリンクしてるからすごい。自然とここから大事な局面なのだと思えた。そしてその通り、ここから切なさが止まらなくなる。*3

     

    切なさはこれだ、四十路の自己犠牲

    私読んでてたまに忘れちゃうことがあったんだが、主人公久世は四十路である、ということ。今まで恋が実ったことがない切ない四十路、しかも年齢も重ねちゃってるからこそ、この自己犠牲が更に沁みる……もうここから切なさが止まりませんでした。

     

    でもやっぱり重要なのは絶対的攻めの格好良さ

    久世の切なさに心が震えたが、でも一番震えたのは悠里の格好良さに他ならない!BL界ではここははずせない。これは説明は言うまでもない。読めば分かる。私は悠里が「島の男でサーフィンをやらない奴は、変態だ」から大好きでしたが。*4 ああ、もう久世を助けるシーン、でら格好良い。今思い出してもドーパミン吹き出します。でも久世は大変なことになってしまいます……。最初読んだ時はBLでここまでしちゃうんか!と思ったが、この物語には必要だったんですよね。

     

    残酷なシーンは必要だった?

    はい、必要でした。彼が武器にしていた美貌、それこそ失わせなければ当て馬の恋はできない、物語は完結しなかったんだと思いました。四十路、せめて容姿でもって「当て馬師」をしていたのにその職も断たれる。しかし何もなくしてからこそ、久世は本当の恋に出会えるのかもしれな、そう思った。

     

    何も無くても好きって言ってもらえたら、最高じゃんな。

     

    さいごに

    とにかくこの物語は、最後までどうなるかわからない面白さがある。喜怒哀楽がつまっていているのに、久世の切なさが最後まで余韻として残る物語だった。

     

    正直まだ感想は書き足りない。例えば 悠里がすごい変態説、いや、甘粕さんが実は変態なんじゃないか、とか。*5 悠里に関しては“変態だなー”って思ったけど、でも良い。なぜなら彼は最高に格好良いから。そもそも私は変態好きだしな。

     

    あと、

    • サブタイトルが格好良い
    • 久世の親父ギャクを思わせるセリフに笑った
    • 七章は私が話に割って入って弁解したくなるほど切ない

    などなど。

     

    ただ自己満足でここまで書いてしまって申し訳ない気もしてます。でも一人でも多くの人に読んでもらえたら良いのに!と思って書いてしまいました。正直なところ、こんなに感想が書きたくなるほど面白いとは思っていなかった。

     

    甘粕さんのブログでこんなこと書かれてました。

    さいごに…… 良い小説なら、だまって座っていればみんなが読んでくれる。 そんな良い時代は終わったんじゃないかと思います。

    シャレード新人小説賞感想文、の補足。 - BL小説書き・甘粕杏奈の日記

    本当にそうかもしれません。面白いから読んでみて!と声をあげないとダメなのかもしれないのかな、と思いました。

     

    ただ甘粕さんの力を目の当たりにして自分の無力さも感じずにはいられませんでしたが!

     

    おまけ

    私がおまけとか言える立場ではないですが、ここまで読んでくれた人にこんなのありますよ!

    私はまだ試し読みの部分しか読んでないので言いにくいんですが、これもあらすじの時点で面白い。私はhontoユーザーなので、電子書籍はクーポンが出たらまとめ買いをしてるのでしばしの我慢です。

     

    hontoは年末は絶対50%オフのクーポンが発行されるのでぜひ興味がある方は登録してみてください。確か初回は500円オフになるかもしれません。

     

    甘粕杏奈さんのサイトにもまだまだ作品があるのでこちらもどうぞ!

    ついでに

    なんとこの甘粕杏奈さんがBL小説における勉強会というのをご提案していただきました!もし興味があったりなんかする人はコメントか、または私信のメールアドレスまたはツイッターとかに連絡くれたら私、大変嬉しいです。

     

    ただ内容が内容なので、自己責任の取れる人に限ります。(あ、勝手に限りました。)詳細はほんのり決まってますが柔軟に対応する気ではいます。これに関してまた記事を書く予定なので、ちらっとでも見てもらえる感謝感激です。

     

    あと、本記事に問題ありましたらお手数ですが私に一報ください。

    *1:私はひとりよがりな文章になりがちなのですごいなーと思って読んだ

    *2:途中までは黒竹とどうにかなったりして!とか思いながら読んだ

    *3:七章は特にもうやめて!ってなるほど感情移入した

    *4:二度言う

    *5:褒めてます